freenote.work Webフリーランスのためのお役立ちメディア

SHARE

webcreative


Web制作に携わるなら必ず知っておくべき著作権について

2022.03.18

引地修一

個人事業主の中には、Webの制作やデザイン、文章の作成などをされている方も多いと思います。その際に問題となりやすいのが「著作権」です。クライアントと受注者側で著作権に対する認識が異なるとトラブルとなり、制作物の譲渡や変更がスムーズにできなくなってしまいます。この記事では、Webやそれに関連する制作物に関する著作権について解説いたします。

著作権とは

著作権はWebコンテンツや画像、デザインといったさまざまな制作物に認められる権利ですが、それがどのように発生し、どのような効果を持つのかを知っておくことが、権利を守り、また侵害しないために重要となります。

著作権は知的財産権のうちの1

著作権は、知的な創作活動によって何かを作り出した人に付与される知的財産権(知的所有権)の中の権利の一種です。知的財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権といった「産業財産権(工業所有権)」と「著作権」とに大きく分けることができます。

著作権の内容とは

「著作権」は、著作権法という法律で保護された権利です。著作権の目的となる「著作物」については、著作権法で次のように定義されています。

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

(著作権法第2条1号)

ここでいう「文化的な創作物」とは、文芸、学術、美術、音楽などのジャンルにおいて、人間の思想、感情を創作的に表現したものと解されています。

いつ発生するのか?

著作権は、著作物を創作した時点で自動的に権利が発生(無方式主義)し、以後、原則として著作者の死後70年まで保護されます。

また、特許権や実用新案権などの「産業財産権(工業所有権)」は、登録をしなければ権利が発生しませんが、これに対して著作権は、権利を得るための手続きを何ら必要とせずに発生する点に大きな違いがあります。

なお、著作権法では「著作権登録制度」も定められています。

これにより、著作権の発生や移転の効果が生じるわけではありませんが、「実名の登録」「著作権に関する一定の事実があった場合」の取引の安全を確保することができます。

この効果の例としては、登録をすることにより、反証のない限り、著作物の著作者と推定される、登録された日にプログラムの著作物が創作されたと推定されるといったことができるなどがあります。

著作者の種類

著作者(著作物を創作した者)の権利は、次の2つに分かれます。

  • 著作者人格権 - 人格的な利益を保護する権利
  • 財産権 - 財産的な利益を保護する著作権

「著作者人格権」は、著作者だけが持つ固有の権利で、これを譲渡したり、相続したりすることはできません(一身専属性)。この権利は著作者の死亡によって原則、消滅しますが、著作者の死後も一定の範囲で守られます。

一方、著作権は財産的な意味を持つ権利であるため、この一部又は全部を譲渡したり相続することかできます。したがって、著作権が譲渡や相続された時には、著作権者は本来の著作者ではなく、権利の譲受人や相続人ということになります。

著作者人格権と著作権

「著作者人格権」「著作権」とでは、その内容に次のような違いがあります。

著作者人格権

「著作者人格権」は、著作者が有する人格的・精神的利益を保護するための権利、わかりやすくいえば、著作者の名誉や著作物に対して有する思い入れや著作者の名誉を守る権利です。

この「著作者人格権」は、公表権、氏名表示権、同一性保持権、名誉声望保持権の4つの権利から構成されます。

著作権(財産権)

「著作財産権」とは、著作者の経済的利益を保護するために、著作物を他人が勝手に利用することを禁止できる権利です。「著作財産権」には、複製権、上演権・演奏権、公衆送信権など11種類があります。           

Webサイト(ホームページ)の著作権

Webサイトの著作権は、著作者である制作者(受注者)が権利をもつというのが原則です。しかしWebサイトは、文章・画像・ワイヤーフレームなどの複数の構成物から成る制作物のため、それぞれについて別々に著作権を考える必要があります。

デザインやテンプレートについて

デザインやテンプレートの著作権は、基本的に制作者に帰属します。ただし判例によれば「受注者が発注者の指示に従ってデザイン、レイアウト、配色などを作成したものである場合には創作性が認められない」(大阪地裁平成24年1月12日判決)としたものもあるため、これらについてどの程度、創意をもって作られたものであるかということが重要といえます。

画像や動画について

写真やイラスト、ロゴなどの画像や動画の著作権は、それらを作成した者に帰属します。ただし、社内のデザイナーなどが業務として制作しているものについては、その会社が著作権を持つのが一般的です。

なお、フリー素材については、その取扱いに多少、注意が必要です。なぜなら、フリー素材はそれを誰もが完全に自由に利用できるわけではなく、一定の制約のもとで使う必要があるからです。

フリー素材については、「商業利用がOKのケース」が多いですが、中には「商業利用はOKだが、風俗営業での利用はNG」、「画像を販売対象として頒布することはNG」など、それぞれの著作権者や運営元による制限がされていることがあります。

また、有料利用の画像等については、主にロイヤリティーフリー(一度使用を許諾された画像等については、何度でも複数回の使用できるというライセンス)と、ライツマネージド(使用1回ごとに用途に応じて使用料を支払うライセンス)がありますが、いずれについても著作権が消滅していたり、放棄されているわけではありません。

そのため、利用にあたっては使用許諾契約書などに掲載されている使用にあたっての条件を確認することが重要です。

記事について

記事については、自社で作成した記事の著作権は自社が保有しますが、外注者が作成したものについては、原則、外注者のものとなります。

なお、発注者が記事の構成を考え、外注先のライターが記事本文を書いたような場合には、構成の内容の程度にもよりますが、構成の指示がテーマや方向性を示した程度のものである場合には、外注先が著作権を持つことになると思われます。

HTMLについて

HTMLについては、最近の判例で「HTMLは、プログラミング言語ではあるが、集計・演算等の処理をするためのものではなく、ブラウザの表示、装飾をするための言語であり、ウェブ画面のレイアウトと記載内容が定まっているときは、HTMLの表現もほぼ同様となり、誰が作成しても似たようなものになる」(東京地裁平成28年9月29日判決)として、創作性が否定されています。 

トラブルなくWebを利用するためには

以上のように著作権は作成時に自然発生し、その権利は著作者のものとなります。しかし、そのままではWebサイトの発注をした人は、それを自分で追加・修正したり、他に譲渡することができなくなってしまいます。

しかしそれはあまり現実的なことではなく、クライアントの意思に反するものといえます。そのため、Webの制作をする際には、契約の中に著作者財産権の譲渡や著作者人格権の不行使の条項を入れておくのが一般的です。

こうすることにより、著作権の所在が明らかとなるだけでなく、運用や譲渡時のトラブルをなくすことができます。

トラブル防止のための条項の設定

著作物を制作したときに、主に注意しなければならないものとして「著作権の譲渡」と「人格権」の問題があります。したがって、著作権に関する契約を締結するときには、「著作権の譲渡の承諾と人格権の不行使」を条項として定めておくべきです。

この条項の例としては、以下のような記載の仕方があります。

第〇条(著作権譲渡)
乙は、Webサイト◯◯(https://〜 ※ドメイン)のすべての著作権を甲へ譲渡する。
2.本著作権には、著作権法第27条および第28条で定める権利を含む。
3.本著作権は、第◯条で定める対価を支払った時に甲へ移転するものとする。

第〇条(著作者人格権)
乙は〇条の著作物に関し、著作権人格権を一切行使しないものとする。

なお、文中の著作権法第27条、第28条とは「翻案権」、「二次的著作物利用権」に関する条項で、Webサイトのコンテンツの修正や、サイトを二次的に利用する場合の権利となります。

これらの権利は、たとえ契約書で「制作会社から発注者に著作権を移転する」と書かれている場合でも、その対象とはならないものとされているため、あらためてこの条項を入れておくことが必要となります。

画像等引用の注意点について

ウェブサイトなどにおいて、他人の写真・文献などを「引用」する場合には、一定のルールにもとづいて行う必要があります。著作権法上の「引用」といえるためには、以下の3つの要件をすべて満たすことが必要です。

  • 著作物が公表されていること
  • 公正な慣行に合致するものであること
  • 引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること

また、引用をする場合には、次の5つを守ることが必要となります。

  1. 引用の必要性があると
  2. 主従関係を明確にすること(自分の著作物が主体)
  3. 引用部分が明確に区別されていること
  4. 引用部分に修正を加えていないこと(同一性保持)
  5. 引用元が明記されていること

具体的な引用方法としては以下のものがあります。

ウェブの資料を引用する場合の例

参考:著作権Q&A「引用の仕方について」
<http://www.〇〇〇〇〇>(アクセス日:2020/10/2)

書籍から引用の書き方の例

“引用文”

出典:甲山乙男(2020)『著作権について』文化出版.

なお、他人のサイトの画像や文章を無断でキャプチャする行為は、私的に使用する場合を除き、著作権の侵害となります。ただし、それが上記引用の条件を守ったものである場合は、他人の著作物でも許可なく利用することが可能となります。

著作権が移転する場合と移転しない場合の効果の違い

著作権が発注者に移転する場合と移転しない場合とでは、その後の取り扱いについて次のような違いが生じます。

<制作物の修正等>

著作権が発注者に移転する場合 - 発注者による制作物の修正等ができる
移転しない場合 - 発注者による制作物の修正等はできない(制作者の同意が必要)

<類似したサイトへの提供の可否>

著作権が発注者に移転する場合 - 制作側は他社への提供ができない
移転しない場合 - 制作側は他社への提供ができる

まとめ

Web制作物の著作権は、制作者にあるというのが原則ですが、それを構成するコンテンツごとに著作権の帰属が異なる場合があります。したがって、Webや制作者側においてはこの点に留意し、必要がある場合には、個別に著作権の移転契約をしておく必要があります。また、制作後においては、発注者とトラブルとならないように著作権の譲渡契約を締結しておきましょう。

この記事を書いた人


WRITER

引地修一

Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。