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個人事業主の年金や保険はどうすればよい?会社員時代の年金はどうなる?

2022.03.16

引地修一

個人事業主の場合は会社員と違って、各種の年金や保険の手続きをすべて自分でしなければなりません、そのため、これらを理解しておかないと「いざというときに保険の適用が受けられない」、「無年金となってしまう」という可能性があります。この記事では、個人事業主の年金や保険、会社員時代の年金の取り扱いについて解説いたします。

現在の年金制度について

現在、日本の年金制度は、以下のように3階建ての構造となっており、このうち2階までが公的年金、3階部分は個人年金となっています。

そのため、複数の年金制度に加入すれば将来的にもらえる年金額は多くなりますが、それだけ支払う保険料は大きくなります。

<現在の年金の構造>
3階:企業年金/確定拠出年金(企業型年金/iDeCo)
2階:厚生年金/国民年金基金
1階:国民年金(基礎年金)

また、年金の加入者は加入する年金や立場により、次のように区分されています。

1号被保険者自営業者、農業・漁業者、学生および無職の方とその配偶者の方
2号被保険者厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の方
3号被保険者第2号被保険者に扶養されている配偶者の方で、原則として年収が130万円未満の方

国民年金について

国民年金の概要について

国民年金は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人がすべて加入する年金で、会社員だけでなく自営業者も加入対象となります。

国民年金の毎月の掛け金は、令和2年時点で一人当たり16,540円/月となっており、受給額の平均は56,252円/月となっています。
※「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より

支払った保険料は、確定申告の際に「社会保険料控除」として所得からこれを控除することができます。

なお、国民年金は加入の単位が個人となっており、夫婦や子供でもそれぞれが別々に加入する必要があります。この点は世帯主が加入すれば、妻や子供が自動的に加入となる厚生年金と大きく異なります。

そのため、厚生年金では家族の人数による保険料の変動はありませんが、国民年金の場合には、納税対象者の数が多いほど世帯当たりの納付額は大きくなります。

国民年金による給付の種類

国民年金に加入した場合、以下の3種類の給付を受けることができます。

老齢基礎年金65歳から受給できる年金
障害基礎年金病気やケガにより障害状態となったときに受給できる年金
遺族基礎年金加入者が死亡した場合にその遺族が受給できる年金

国民年金は、追加で月々400円の保険料を納めることで、年金の給付額を増やすことができます。これを「付加年金」といいます。

付加年金に加入した場合には、老齢基礎年金に加えて「200円×納付した月数分」の給付金を追加で受け取ることができます。ただし、国民年金基金に加入している場合は、付加年金を納付することはできません。

国民年金の免除と追納制度について

収入が少ない、失業中などの理由により保険料の納付が難しい場合には、一定の要件を満たして社会保険庁の承認を得た場合には、申請により保険料の免除を受けることができます。これを「申請免除」といいます。

申請免除には、次の4種類があります。

全額免除全額納付した場合の年金額の2分の1(平成21年3月分までは3分の1)が支給
4分の3免除全額納付した場合の年金額の8分の5(平成21年3月分までは2分の1)が支給
半額免除保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6(平成21年3月分までは3分の2)が支給
4分の1免除保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7(平成21年3月分までは6分の5)が支給

免除を受けた場合にはその期間分の受給額は減額されますが、年金をもらうための受給期間にはカウントされるため未納とならずに済みます。

また、免除をうけている場合には、その期間中に障害や死亡しても、障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができますが、未納の場合にはこれらを受給することはできません。

なお、免除を受けた場合には、その後10年以内であれば、あとから免除分の保険料を納めることができます。これを「追納制度」といいます。

追納がされた場合には、その期間の年金額は減額になりません。

その他の年金制度について

国民年金基金について

国民年金基金は、自営業・フリーランスなどの国民年金第1号被保険者の方が、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる公的な年金制度です。

加入できるのは、次のような方となります。

  1. 20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者の方
  2. 60歳以上65歳未満の方や海外居住者で国民年金に任意加入している方

国民年金基金の種類

国民年金基金には、「全国国民年金基金」「職能型国民年金基金」の2種類があり、全国国民年金基金は、上記の条件を満たす方であれば誰でも加入できます。

これに対し、職能型国民年金基金は、基金ごとに定められた事業または業務に従事する国民年金の第1号被保険者の方のみが加入できます。

全国国民年金基金と職能型国民年金基金は事業内容は同じですが、いずれか一つの基金にしか加入することができません。

なお、国民年金基金には、遺族一時金が支給されるタイプのA型と、遺族一時金はないがその分掛金が安いB型があります。

掛金は、月々68,000円が上限です。この掛金は全額が社会保険料控除の対象となり、確定申告により税金が軽減されます。

確定拠出年金について

「確定拠出年金」とは、会社や加入者が支払った掛金を加入者が自らの判断で運用し、老後に年金を受け取る私的年金制度です。

確定拠出年金には、「企業型確定拠出年金」「個人型確定拠出年金(iDeCo )」の2つのタイプがあります。

<企業型確定拠出年金(企業型年金)>
企業型年金は、会社が従業員を対象に退職金や老後資金の準備のために行う年金制度です。掛金は原則として会社が拠出しますが、加入者も一定の範囲内で自ら掛金を拠出できる場合があります。

<個人型確定拠出年金(iDeCo)>
iDeCoは、個人自らが将来の年金準備をするための制度です。加入できるのは、フリーランス、公務員、専業主婦、企業型年金に加入していない会社の社員などとなります。なお、掛金は加入者が自分で拠出します。

確定拠出年金の特徴として、ポータビリティに優れていることがあげられます。

以前の企業年金ではその企業を離れる場合には、これを次の職場にこれを持ち出すことが難しかったですが、確定拠出年金は積み立てた年金資産を持ち運べるため、制度に継続して加入することができます。

そのため「企業型→企業型」・「企業型→iDeCo 」「iDeCo →企業型」といった運用が可能です。

確定拠出年金のメリットとしては、以下のものがあります。

  • 加入者が拠出した掛金は、全額が所得控除の対象となります。
  • 通常の金融商品では課税の対象となる運用益が、非課税となります。
  • 給付金を年金で受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」の対象となります。

個人年金保険は公的年金を補填する保険商品

個人年金保険は、個人が将来のための資金を準備するために用意された保険です。一般的には生命保険会社などで商品を提供しています。

個人年金保険には以下の3種類があり、それぞれで役割が異なります。

<確定年金>
確定年金とは、年金を決められた一定期間受け取れる商品です。年金受取期間中に被保険者が死亡した場合でも、相続人が残りの受取期間の年金相当額を一時金または年金として受け取ることができます。

<有期年金>
有期年金は、確定年金と同様に一定期間の年金を受け取る商品ですが、確定年金と異なり、被保険者が年金受取期間中に死亡したらその時点で年金の支払いは終了し、相続人は残額を受け取ることができないという特徴があります。

<終身年金>
終身年金とは、被保険者が生存しているあいだは年金が受け取れる年金保険です。決められた期間がないのが、確定年金や有期年金と異なります。ただし、年金受取期間中に被保険者が死亡した場合は年金の支払いは終了し、相続人が引き継ぐことはできません。

個人年金保険の保険料は、一定条件を満たせば、最高で年間4万円の個人年金保険料控除の対象となります。なおこの他に、契約時に、給付される年金額を決定して運用する「定額個人年金」や、保険会社の運用実績により受取額が大きく変動する「変額保険」などがあります。

退職後の年金はどうなる?手続きは必要?

「企業年金制度」のある企業に勤めている方が転職をする場合には、「脱退一時金」として受取るか、次に「持ち運ぶ」のいずれかとなります。

ただし、すべての年金が持ち運べるわけではなく、持ち運びができるのは「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「確定拠出年金」および企業年金連合会の間となります。

なお、転職先に確定拠出年金制度がない場合でも、個人型(iDeCo)に移換して継続することが可能です。ただし、確定拠出年金の移換(企業型→個人型)は、資格を喪失した月の翌月から起算して6ヶ月以内に手続きをする必要があります。

また、法律的には問題なくとも、会社や基金のルールによっては持ち運びができないこともあるため、事前に制度の内容を確認しておきましょう。

まとめ

個人事業主は、年金の選択や手続きなどをすべて自分で行う必要があります。とくに、国民年金の仕組みや手続きは、個人事業主に関係が深いので十分に理解しておきましょう。

支払いができなくなった場合の保険料の免除なども知っておくと、いざというときに役立ちます。また、それまでの企業の年金は持ち出しができるかどうかも重要なポイントとなります。

この記事を書いた人


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引地修一

Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。