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Webサイト制作であればデザイン制作がタスクに含まれることが大半だと思いますが、デザインはさくっと決まる時もあれば何度もリテイクが繰り返されて後工程を圧迫したり、納期遅延の原因となることもしばしばですよね。今回はこのデザインディレクションのポイントを紹介していきます。
まず何よりデザインはWeb制作の中で1番分かりやすいアウトプットなので、誰にでも意見が言いやすいというのが特徴です。専門的な人でなければソースコードに指摘をすることはあまりないと思いますが、デザインに関してはリテラシーに関係なくいろいろな人が意見を言ってきます。
ユーザーもITリテラシーが高いとは限らないので、仮に素人意見でも貴重な意見なのですが、それらを上手く取り扱わないと迷走したり、余計なデザインのリテイクがかさんでしまうことになります。
上手くいくかはデザイン提出までで8割決まる。
デザインがスムーズに決まるかは提出までが重要になります。 1つ目のポイントはWebサイトの目的とターゲットが共通認識となっているか。ここが定まってないと議論の拠り所がなくなってしまいます。
次にデザイン提出時には必ずデザイン趣意書を作成します。この趣意書をもって定義された目的とターゲットに対して、なぜこの写真・フォント・色にしたのか等をなるべくロジカルに説明します。ここはできればデザインを制作したデザイナーにプレゼンしてもらうのが望ましいです。
もちろん、これをやったから修正やリテイクが無くなるというわけではありません。ですが、このステップを踏むことで「想定ターゲットに対してこの色はイメージがあわない」「信頼感を訴求したいのにこのフォントはポップに感じる」といった具合に拠りどころを持った意見を回収することができます。
このときに「なんかパッとしない」「色が好みでない」といった漠然としたフィードバックはふるいに掛けることができます。もちろん聞く耳を持たないというわけではく、なぜそう感じるのか・なにが問題なのかと言った点を掘り下げていってあげることで、発言者自身が「個人の好みだった」「たしかに目的とは逆行している」といったことに気づいて自然と取り下げてくれるようになります。
そして、このコミュニケーションは実際に作ったデザイナーよりも客観視できるディレクターが適任です。
このように拠り所を持った議論から生まれる修正はデザインをより良くするために共通のゴールに向かったものになり、修正があったとしてもデザインをブラッシュアップするものになります。
具体的な修正もそのまま受け取らないように注意。
次に細かな点の修正についての注意でポイントです。
「このボタンを赤くしてください。」
「メインの写真を変えてください。」
「商品の値段はもっと大きくしてください。」
といった修正はよくありますよね。一見、具体的なので指示通りに対応すれば良さそうですが、いざ対応してみると「確かに言った通りなんだけどなんか違うんだよねぇ」といったことが起こります。またデザイナーからその修正はしたくないといった意見をもらう場合もあります。
これは色や形で意思疎通を図ろうとしたことで起きる問題です。
例えば目立たせたくて「このボタンを赤くしてください。」と言ったものの思ったほど目立たないと「やっぱり緑にしてみて」といったことがおきます。しかもデザイナーからしたら全体のトーンとあわない色を指定されてはデザインの品質を担保できなくなってしまいます。
この場合は「このボタンはなるべくクリックさせたいので目立たせたい」という意図を汲み取り、デザイナーと検討してみますと持ち帰りましょう。
このように預かればフォントのウェイトを変える。ボタンには手を加えずに周りの余白を広げることで目立たせるなど様々な選択肢が選べます。そしてその引出しはデザイナーが1番持っていますので、デザインの世界観を崩さずにクライアントの要望を叶える修正ができるはずです。
つまり色や形ではなく意図の話をすることが重要になります。
クライアントも決して言いなりにデザインをして欲しいのではなくプロのアイデア・アドバイスも期待してお金をだしているので、こういったやり取りができるとデザインに対して信頼を得られ任せてくれる部分も多くなります。
信頼を得るための3つの理解
そしてこの際に理解しておかないといけない3つのポイントがあります。それは数字の理解・ビジネスの理解・ユーザーの理解です。
1つ目は「数字の理解」
現状の数字がどういう状態でデザインで何を解決しようとしているかが分かっていることが重要になります。 直帰率が高いのでファーストビューでユーザーを引きつけることが必要なのか、コンバージョン率が悪いので内容を分かりやすく見せることが重要なのかなど、数値から課題を理解しましょう。
2つ目は「ビジネスの理解」
クライアントはどういう思いを持って商品・サービスを提供しているのか?どういう仕組みで収益をあげているのか? これを知ることで自分ごととして捉え、デザインを考えることができます。
3つ目は「ユーザーの理解」
ユーザーはどう年代・性別・趣味嗜好なのか?どういうUXを期待しているのか?
これらを理解して最適なデザインを提案することでクリエイティブのプロとして、そしてビジネスパートナーとして信頼してもらえるようになり、結果として不要なリテイクが減ってデザインの進行がスムーズにいきます。
ベテランであればここを1人で担ってくれるWebデザイナーの方もいますが、経験が浅いと難しい場合もありますので、その際はWebディレクターが一緒に考えたり、クライアントと上手くコミュニケーションを取り、チームとしてパフォーマンスを発揮できるようにしていきましょう。
この記事を書いた人
WRITER
中村 和正
Kazumasa Nakamura
株式会社 gracenote CEO
WACAウェブ解析士マスター
Web業界17年目。Webマーケティングや経営領域のコンサルティングや運用支援を行うほか、プロジェクトマネージャーやインフォメーションアーキテクツとして数多くのプロジェクトにも参画している。 自身がWebフリーランスから法人成りした経験を活かし、フリーランスの独立・成功を支援しています。