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個人事業主は資金調達をした方がよい?借りるとすればどんな融資が使える?

2022.03.25

引地修一

個人事業主の場合は、法人と比較して少ない経費で事業を立ち上げることができ、また運営費もさほど多額とはならないのが普通です。そのため「融資は借りなくてもよいのでは?」と考えがちですが、そうとは限りません。なぜなら、融資はお金がないときほど借りにくく、余裕があるときほど借りやすいからです。この記事では個人事業主が融資を借りた方がよいタイミングやおすすめの制度などについて解説いたします。

個人事業主でも融資は受けた方がよい?本当に融資は受けられる?

個人事業主の方については、その方の状況によって借りた方がよいときと借りない方がよいときがあります。

借りた方がいい場合

・現在の事業で売上げがある程度安定しており、利益も出ている。
・今後の業務でまとまった経費を使ったり、人を雇う予定がある。
・返済額を間違いなく、支払える見込みがある。

借りるのを控えた方がよい場合

・仕事が安定しておらず、売上げや利益の額の幅が大きい。
・当面の間、まとまったお金を使う予定がない。借りても使い道がない。
・借りた後に返済が滞る可能性が高い。

金融機関では、返済の不安がある方に対しては、原則して融資はしません。

では、返済の可能性については「どこを見て判断しているのか?」といえば、基本的には「売上げ」と「利益」の2ヶ所です。

利益は返済の原資となるもののため、この額がまちまちだと、金融機関側では「返済できないときがあるのでは?」と不安を抱きます。また、そもそも見込みの利益の額が返済額を上回らないようでは、融資をすることはできません。

売上については、これによりどれだけの規模の事業をしているのかという判断のもととなるため、できればこの額が高く安定していることが望ましいといえます。しかし、現在は売上が少なくとも融資を利用して売り上げが伸ばせるという明確なビジョンがある場合には融資が出ることもあります。

このように金融機関では、売上が安定していて、間違いなく返済できる利益を出せる事業者に貸したいと考えています。にもかかわらず、「今は困っていないからいいや」という理由で融資を受けない場合には、せっかくのチャンスを棒に振ることとなります。また、早めに融資を受けておくことのメリットの一つとして「早めに金融機関の信用を獲得することができる」ということがあります。

通常、1回目の融資ではあまり大きな額の融資を受けることはできません。しかし、返済に遅れなどがなく、キチンと支払いを続けて入れば2回目の融資の時にはかなり大きな額を借りられるようになります。

けれど、融資を利用しない限りは、いつまでたっても実績のない方のままという状態が続きます。したがって、あまり大きな額でなくとも、早くから融資を受けて信用実績を積んでおくことが重要といえます。

個人事業主におすすめできる融資制度

個人事業主の方が利用しやすいのが、日本政策金融公庫か信用保証協会の制度融資となります。これ以外にも銀行などが信用保証協会を利用せずに貸し出しをするプロパー融資もありますが、こちらは審査のハードルが高く、簡単に利用することはできません。そのため、ここでは日本政策金融公庫と制度融資の2つについて説明いたします。

※ 以下の金利は2022.02時点のものです。

日本政策金融公庫

新創業融資制度

創業前または開業から2期を経過する前までの方が利用できる無担保無保証の融資で、創業者向けの融資としては最もポピュラーな制度です。

※「2期」とは、個人事業の場合は決算日が12/31のため、1期目は開業日から12/31までの期間となります。したがって2年ではないことに注意してください。
限度額3,000万円(うち運転資金1,500万円)
金 利2.36〜2.85%

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性または35歳未満か55歳以上の方であって、 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資です。通常の融資より、やや低い金利で利用することができます。

限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
金 利1.66~2.15%

担保を不要とする融資

税務申告を2期以上行っており、担保や第三者保証人なしで利用したい方向けの融資です。個人事業主の場合は、無担保無保証で利用できます。

限度額4,800万円
金 利2.06~2.55%

自治体の制度融資

制度融資とは、都道府県や市区町村といった自治体と金融機関、国の保証機関である信用保証協会の3者が協調して中小企業へ貸し出しをする、いわばパッケージ型の融資制度です。

ただし、この制度融資は各自治体が主催する制度のため、融資の内容や金利などの条件がそれぞれの自治体ごとに異なります。そのため、制度融資を利用する場合には、会社の事務所が所在する自治体が取り扱っている融資の内容を確認する必要があります。

なお、制度融資は銀行や信用金庫などの金融機関から申し込む必要があります。そのため、制度融資の利用時には、どこの金融機関から申し込むかを決めた上で、申込みにつきその金融機関の同意を得る必要があります が、個人事業の方にはメガバンクより信用金庫の方が親身になってもらいやすいためおすすめです。

融資で必要となる書類とは?

融資の申込み時には、一定の書類が必要となります。一般的な必要書類は、以下のとおりとなりますが、創業融資か通常の融資かで内容が異なります。

※ すべてのケースですべての資料が必要になるわけではありません。

創業融資の場合

  • 創業計画書
  • 代表者の身分証明書
  • 借入申込書
  • 自己資金の確認できる通帳(直近6か月〜1年分)
  • 不動産の賃貸借契約書(事務所等を賃貸する場合)
  • 営業許可書、資格または免許を証明するもの(許認可等が必要な事業の場合)
  • 見積書、契約書(設備を購入する場合)
  • 納税証明書(必要に応じて)
  • 確定申告書(開業後1期を経過している場合)
  • 試算表(決算時より6ヶ月以上経過している場合)

通常の融資の場合

  • 借入申込書
  • 代表者の身分証明書
  • 企業概要書(はじめて日本政策金融公庫を利用する場合)
  • 事業で使用している通帳(直近6か月〜1年分)
  • 納税証明書
  • 確定申告書2期分
  • 試算表(決算時より6ヶ月以上経過している場合)
  • 見積書、契約書(設備を購入する場合)
  • 事業計画書(必要に応じて)
  • 借入金返済明細書(すでに借入金のある場合)
  • 不動産の賃貸借契約書(事務所等を賃貸の場合)
  • 営業許可書、資格または免許を証明するもの(許認可等が必要な事業の場合)
  • 印鑑証明書

融資の申込みから融資が出るまでの流れ

日本政策金融公庫で融資を利用した場合の手続きの流れは、以下のとおりとなります。

融資の相談相談は必須ではありませんが、はじめて融資を申し込む場には、あらかじめ事業所を管轄する公庫の支店で相談することをおすすめします。
融資の申込み管轄の公庫支店に融資の申し込みをします。なお、融資の申し込みは直接、支店に書類を提出する他、郵便やインターネット経由でも行うことができます。
↓ 7~10日
担当者との面談はじめて日本政策金融公庫を利用する場合は、担当者との面談が行われます。面談場所は、支店窓口または事業所のいずれかです。面談時に求められる資料もあるため、担当者の指示に従ってください。ただし、2回目以降の申し込みでは面談は省略されます。
↓ 7~14日
融資の可否の連絡面談から1~2週間後に、公庫の担当者から融資の可否に関する連絡があります。
↓ 7~10日
融資契約手続き審査の結果、融資がOKの場合は、支店において融資に関する契約(金銭消費貸借の締結)を行います。
↓ 5~10日
資金の振込融資の契約が完了した場合は、5~10日程度で融資された資金が振り込まれます。

融資の申込みから資金が出るまでには、約1~1.5ヶ月の期間がかかりますので、資金が必要となるタイミングにあわせて申し込むようにしてください。

融資の注意点

融資の申込みをする際には、以下のポイントも抑えておくとスムーズとなります。

計画はキャッシュアウトに注意!

融資を受ける際に必要となる創業計画書では、ムリに売上げを上げるよりも、利益が返済額を下回る月がないようにする必要があります。このような月があるときは返済ができないということを意味するため、このような計画は大きなマイナス評価となります。

売上げの見込みが少ない場合は創業時に勝負!

事業の開始2年目以降に融資を受ける際には、融資の審査は決算書を中心に行われます。そのため、1年目の業績の見通しが悪いときには、創業計画書の内容だけで勝負できる決算書ができる前のタイミングで申し込んだ方が有利となります。

例えば、10月に開業した場合には、個人事業の場合、決算日まで2ヶ月しかないこととなりますが、このタイミングで決算書を作って融資を申し込んでしまうとほぼ内容のない決算となるため、審査で不利となりやすくなります。したがって、このようなケースでは決算書を作る前に申し込むことで決算書の不利を回避できます。

自己資金の目安について

創業融資では、開業後1期を経過する前に申し込んだ方については、創業にかかる経費の1/10以上の資金があることが必要となります。これを「自己資金」といいます。

しかし、1/10の自己資金があれば残りの9/10(つまり自己資金額の9倍)の融資が受けられるというわけではなく、通常は自己資金額の3倍程度が限度額の目安となります。

まとめ

個人事業主の場合は、比較的余裕があるうちに融資を受けておいた方が、後々、有利になるといえます。しかし、融資を受けられたからといって高額な機材などを揃えたりするのではなく、その後の営業資金として取っておくということも大切です。

とくにWebフリーランスなどにおいては、受注から請求までの期間が数ヶ月になることもあるため、数か月後に入金の見込みがあっても、当面の1~2ヶ月間は入金がないということもあります。したがって、今後の資金繰りを考え、このような期間のつなぎ資金として役立てることをおすすめします。

この記事を書いた人


WRITER

引地修一

Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。