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最近、補助金や助成金が注目されていますが、その中でも個人事業主やフリーランスの方が利用しやすいのが「小規模事業者持続化補助金」です。他の補助金と比べて補助額は50万円(一般型)と大きくはありませんが、身近な販路開拓の取組みで使えるため、比較的、利用がしやすいものとなっています。
また、その内容を理解しておけば、クライアントへ営業するときの提案手法としても活用することができます。この記事では、最新の情報にもとづき、申請のコツから今後のスケジュール、提案方法などについて解説いたします。
「小規模事業者持続化補助金」の概要
「小規模事業者持続化補助金」とは?
「小規模事業者持続化補助金」は、中小企業や個人事業主といった小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取り組みを支援することを目的とした補助金です。
現在は、「一般型」(第8回分)が実施されています。なお、新たに5つの枠が新設され補助上限なども異なるので、申請をされる方は適用できる枠などをよく確認してみてください。
「小規模事業者持続化補助金」のスケジュール
現時点での「小規模事業者持続化補助金」のスケジュールは以下のとおりとなります。
【一般型】
- 第7回受付締切:2022年2月4日 ※終了
- 第8回受付締切:2022年6月3日
- 第9回受付締切:2022年9月中旬予定
- 第10回受付締切:2022年12月上旬予定
- 第11回受付締切:2023年2月下旬予定
【低感染リスク型ビジネス枠】
- 第5回分 受付締切2022年1月12日 ※終了
- 第6回分 受付締切2022年3月9日 ※終了
「小規模事業者持続化補助金」の補助率・補助上限額・補助対象となる経費
小規模事業者持続化補助金の制度の補助率・補助上限額等は以下のとおりです。
補助率 | 補助上限 | |
通常枠 | 2/3 | 50万円 |
賃金引上げ枠 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 200万円 |
卒業枠 | 2/3 | 200万円 |
後継者支援枠 | 2/3 | 200万円 |
創業枠 | 2/3 | 200万円 |
インボイス枠 | 2/3 | 100万円 |
※詳細はガイドブックを参考ください。
<補助対象となる経費>
【一般型】
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費
- 委託費
- 外注費
【低リスク】
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 設備処分費
- 委託費・外注費
- 感染防止対策費
補助金の対象となる者
【一般型】
次のいずれかの国内の小規模事業者であること
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 常時使用する従業員の数 5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下
- 製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下
- 会社または個人事業主もしくは一定の特定非営利活動法人
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に 100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
- 確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の平均額が 15 億円を超えていないこと
- 商工会の管轄地域内で事業を営んでいること。
- 持続的な経営に向けた経営計画を策定していること
- 一定の事業において受付締切日の前10か月以内に、先行する受付締切回で採択・交付決定を受けて、補助事業を実施した(している)者でないこと
- 反社会的勢力に該当しない者であること・国内の小規模事業者であること
補助金申請のフロー
小規模事業者持続化補助金の申込みの流れは、以下のとおりとなります。
1. 申請要件の確認と公募期間のチェック
小規模事業者持続化補助金の申し込みの際には、あらかじめ、申請要件や公募期間のチェックをしておかないと、「古い要件で確認してしまった」や、「公募に間に合わない」となってしまう可能性があります。
2. 申請手順の確認
小規模事業者持続化補助金の申請をするときには、事前に公募要領などで手続きの流れや注意点を最後まで確認しておくことをおすすめします。要件の一部しか確認しないと思わず重要な見落としをしてしまうことがあります。
3. Jグランツのアカウントの取得
小規模事業者持続化補助金は、郵送とJグランツでの電子申請のいずれかを選択して行います。(ただし、電子申請は必須ではありません)
4. 申請書類のダウンロード
申請手順が確認したら、持続化補助金のHPから申請書類をダウンロードします。
5. 「経営計画」、「補助事業計画」を記載し、商工会議所等へ提出
「経営計画」と「補助事業計画」を作成して、地域の商工会または商工会議所に提出し、「支援機関確認書」の交付を依頼します。なお後日、地域の商工会が「事業支援計画書」を発行するので、これを受け取ります。
6. 必要書類の提出・申請
申込みの締切までに必要な提出物を用意し、補助金事務局へ提出します。申請先は、事業者の事業所所在によって異なります。
7. 採択・交付申請・交付決定
申請が採択された事業者は、補助金の交付決定に関する手続きを行います。
8. 事業実施
採択者は「補助金交付決定通知書」を受領後、補助事業に着手します。
9. 補助事業の完了・実施報告書等の提出
補助事業が終了した場合には、定められた期日までに実績報告書等を事務局へ提出します。
「小規模事業者持続化補助金」の事例と提案方法
小規模事業者持続化補助金のWebサイトや広報では、各種の成功事例が公表されています。ここではその中からいくつかの事例を紹介しますが、これらはいずれも個人事業主が取り組んだものとなっています。
補助金受給の事例とポイント
【食のセレクトショップを開設に伴う看板・チラシの作成(nanacos)】
過去のバイヤー経験やすでにある販路の利用が可能なことを強みとして強調。また、単純に『看板・チラシを作ります』ではなく、それがどのような効果を生むのかを説明。
【コロナによる売上低下の改善のため、ローカル紙への広告出稿と、高性能フライヤーを導入(日本そば 由のや)】
地元認知度を上げるためローカル紙へ広告を出稿。また、高性能フライヤーにより、桜エビの揚げ物をセットにした新メニューを開発。
【ステイホームで味わう手作りあじ寿司セットのEC(Hair make give charm)】
新規顧客開拓のため、ランディングページの制作と顧客へのメール配信サービスを導入
その他にも、以下のような成功事例があります。
【販売促進】→チラシ・ポスター・ポップ・パンフレット等の作成
- 商品宣伝のためのイベントを知らせる広告
- HP開設(ウェブショップ・自社サイトの拡充or新設)
- 会社 or 店舗 独自の「ゆるキャラ」を制作
【改装など】→工事による顧客満足度向上から集客を狙う
- 高性能のトイレ設置(和式を様式へ変更)
- 看板の新設・増設
- 外装・内装などの改装工事
【商品開発】→新商品(orサービス)開発による集客向上
- 新しい包装紙の導入
- 古くなった商品パッケージのデザインを一新
- 新メニューの開発(飲食)
※成功例については関係省庁のWebサイトなどでも紹介されていますので参考にしてみるとよいでしょう。
事例を業務に活かす方法
このように、小規模事業者持続化補助金には数多くの導入事例がありますが、Webサイトの制作やインターネット広告といったものも補助対象になりますのので、自身のサービスの販促にも活用できる補助金となっています。
また、補助金の存在や自分で使えるということを知らないクライアントも多く、また申請するにしても「自分の強みがどこにあるのか」や、「具体的に何をすればよいのか」がわかっていない事業主も少なくありません。
そのために補助金の活用も含めた販促施策をクライアントに提案することも有効です。例えば低リスク型が採択された取組なら150万のWebサイト制作や広告施策を受注して、クライアントは50万円の持ち出しで済むということになりますので受注率の向上も見込めます。
なお、具体的な申請や計画の作成については、あらかじめ専門家とタイアップをして、事案が生じたときにはサポートをお願いするといった分業体制で取り組むとより効率的に持続化補助金を活用することができるはずです。
この記事を書いた人
WRITER
引地修一
Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。