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「源泉徴収」とは何?どんな手続をすればいいの?

2022.02.22

引地修一

みなさんは「源泉徴収」という手続きをご存知でしょうか?これは簡単にいえば税金(所得税)の天引き制度です。サラリーマンだったときは、年末調整で会社がこれを行ってくれたと思います。

けれど、個人事業主では自分ですることになるため、しっかりと源泉徴収のことを理解しておかないと、自分で手続きするときに「困った!」ということになってしまいます。この記事では、一般的な源泉徴収の仕組みや、フリーランスの場合の手続きについて解説いたします。

「源泉徴収」とは?

源泉徴収とは、給与や賞与、報酬などを支払う者が所得税を計算し、あらかじめそれを給与等から差し引いて税務署へ納付する手続きをいいます。

この手続きは、所得税についてのみ行われます。源泉という言葉がとっつきにくい感じがしますが、この源泉とは「会社が従業員に給与を支払う前の大元」を意味しています。

これは会社に限らず、個人事業主がクライアントからもらう報酬についても同じです。しかし、個人事業主の場合は取引先が入金の際に手続きを行なっているため、源泉徴収されているということが実感としてわかりにくいといえます。

なお、平成25年1月1日から令和19年12月31日までの間に生ずる所得については、源泉徴収の際に「復興特別所得税」を併せて徴収されているため、通常よりも2.1%多い金額が徴収されています。

源泉徴収は、なぜ必要なのか?

本来、税金の納税は各人が所得や控除の計算をし、申告するものです。しかし、全員が申告を行うと

  • 税務署の処理がパンクする
  • 申告の間違いや申告忘れが多発する
  • わざと税金を過小に申告するケースが増える

などの事態が予想されるため、会社が本人に代わって給与から所得税分を差し引いて納付させるのが源泉徴収となります。なお、源泉徴収をした会社はその所得税(および復興特別所得税)を原則として、給与などを支払った月の翌月10日までに納付しなければならないこととされています。

源泉徴収と年末調整の関係について

会社では、一定の税額を給与や賞与から天引き(徴収)しますが、このときの計算は概算で行っているため、見込みの金額と本来納めるべき税額を一致させる必要があります。この手続を「年末調整」といいます。

そのため、見込みで支払った税額の方が多い場合には、その差額が戻ってきますが、逆に少ない場合には不足分を追加で徴収されることとなります。

フリーランスに年末調整はありませんが、確定申告の際に最終的な所得にかかる所得税と源泉徴収された金額の差異を計算して、足りなければ追加で納税、納め過ぎている場合は還付金として返還されます。

個人事業主が源泉徴収をしなければならないケース

フリーランスでも源泉徴収されるの?

さてフリーランスのみなさんは源泉徴収されるケースと源泉徴収をするケースがあります。

まずされる場合ですが、法人が以下のいずれかに該当する業務をフリーランスに依頼した場合は源泉徴収をしなければならないこととなっています。

  • 税理士・弁護士・司法書士・建築士・測量士などの士業への報酬
  • 原稿の報酬・講演料・挿絵の報酬・写真の報酬・作曲の報酬・デザインの報酬・投資助言の報酬

ライターへの報酬やデザイナーへの報酬もこれに該当します。

なお、ライター等が源泉徴収される額は、以下のとおりとなります。
〇 100万円以下  A×10.21%
〇 1回に支払う額が100万円超   (A-100万円)×20.42%+102,100円

たとえば、150万円の原稿料を支払う場合には
 (150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円
が源泉徴収される金額となります。

100万円を超えた場合には、源泉徴収される金額が大きくなることに注意が必要です。

フリーランスが源泉徴収しなければならないケース

次にフリーランスが源泉徴収をするケースですが、次のいずれかに該当する場合には、源泉徴収をする義務が生じます。

<フリーランスが源泉徴収義務者になるケース>
・ 個人経営から法人経営へ移行した(いわゆる法人成り)場合
・ 正社員、アルバイト、パートタイムなど従業員を雇用して給与を支払っている場合
※ ただし、毎月の給料が88,000円未満の場合は、源泉徴収不要
・ 青色事業専従者に給与を支払っている場合
・ 特定の士業やライター、デザイナー等への報酬を支払った場合

したがって、これらのいずれかに該当するについては、フリーランスであっても源泉徴収をすることが必要となります。

まとめ

源泉徴収とは、所得税についての天引き制度です。サラリーマンの時には会社がこれを行ってくれましたが、個人事業主はすべて自分で手続きをする必要があります。従業員を雇っていない個人の場合には、原則として手続きをする義務がありませんが、一部の士業の方やライター・デザイナーの方に報酬を支払うときには、個人事業主でも源泉徴収が義務となりますので注意しましょう。

この記事を書いた人


WRITER

引地修一

Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。