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【2022年最新】個人事業主でも使えるIT導入補助金。制度や使いかたについて解説。

2022.03.31

引地修一

IT導入補助金は、中小企業の方がITツールを導入する際に利用できる制度ですが、中には「個人事業では使えないのでは?」とお考えの方もいるかと思います。しかし、ITツールは一定の要件を満たす方であれば、個人事業の方であっても問題なく利用できます。この記事では個人事業の方が申請することを念頭に置いて、その特徴や申請の流れ、受注への活かし方について御説明します。

IT導入補助金の制度の概要

個人事業主でもIT導入補助金は受けられる?受けられないケースとは?

IT導入補助金の申請については、個人と法人で区別したり、要件が異なることはないため、個人事業主の方でも問題なく申請することができます。

ただし、次のケースに該当する方については、この補助金の申請をすることができません。

  • 風俗営業法にいう「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営んでいる個人事業主
  • 過去1年において、労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者
  • 反社会勢力の個人事業主、または反社会勢力となんらかのかかわりがある個人事業主
  • 経済産業省から補助金等交付停止措置または指名停止措置が講じられている個人事業主
  • IT導入補助金 2021 において「IT導入支援事業者(ITベンダー)」として登録済みの個人事業主

IT導入補助金の制度の概要と特徴とは?

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する補助金です。そのため「ITで業務効率化・データ活用をしたい」「働き方改革・コロナ・DX対策を進めたい」という企業におすすめです。

どのようなITツールを導入するかにより、利用できる枠が「通常枠」と「低感染リスクビジネス枠」に分かれ、さらに導入するソフトウェアの種類により、通常枠はA類型とB類型に、低感染リスクビジネス枠はC類型とD類型に分かれます。

  • A類型:1 種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請
  • B類型:4 種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請
  • C類型:2種類以上の業務プロセスを保有し、複数のプロセス間で情報連携するもの
  • D類型:2種類以上の業務プロセスを保有し、テレワーク環境の整備に資するもの

どの枠や類型が利用できるかにより、補助額や対象経費が異なります。

事業類型 通常枠 低感染リスク型ビジネス枠
A類型 B類型 C類型 D類型
補助額 30~150万円 150~450万円 30~450万円 30~150万円
補助率 1/2 2/3
対象経費 ソフトウェア・クラウド利用費導入関連費 先に加えて、PC・タブレット等のレンタル費用

IT導入支援事業者とは?検索方法は?

IT導入補助金は、IT導入支援事業者(ベンダー事業者)として事前に登録されている事業者と共同して申請する必要があります。

そのため、自分が利用したいと考えているITツールの提供事業者がIT導入支援事業者となっていない場合には、そのツールを使った補助金の申請はできないということになります。したがって、当補助金の申請をする前にまずは希望するITツール提供会社がIT導入支援事業者となっているかどうかを確認しておく必要があります。

なお、IT導入支援事業者かどうかの確認方法としては、その会社のホームページを見る、問い合わせるという方法の他に、以下のサイトでIT導入支援事業者を検索することができます。

IT導入支援事業者・ITツール検索

最近までのIT導入補助金の採択率とスケジュール

最近までのIT導入補助金の採択率

第3次、4次分のIT補助金の採択率は以下のとおりとなっています。

 A類型B類型C類型D類型
3次締切分58.0%43.4%61.1%55.7%
4次締切分56.3%49.0%60.3%61.1%

IT補助金のスケジュール

IT導入補助金第5次締切分(A〜D類型共通)のスケジュールは、以下のとおりとなります。

  • 公募締切 :令和3年12月22日(水) 17:00まで
  • 交付決定  : 2022年1月26日(水)
  • 事業実施期間 : 交付決定日以降~2022年6月30日(木)

なお、 第6次分については、通常枠・低感染リスク型ビジネス枠ともに未定です。

2022年のスケジュールの見通し

2022年度6次公募のIT導入補助金では、特別枠の新設など大幅な変更が予定されています。これに伴い、既存の類型や補助額などの変更や廃止がされる可能性もあるため、今後の状況については注意が必要です。

なお、現時点では、次の改正が決定となっていますが、既存の制度とどのように整理されるかについては今のところ公表されいません。

類型枠 デジタル化基盤導入類型 複数社連携IT導入類型
補助額 ITツール PC等 レジ等 a. デジタル化基盤導入類型の対象経費
⇒左記と同様
b. それ以外の経費
⇒補助上限額は50万円×参加事業者数、補助率は2/3(1事業あたりの補助上限額は3,000万円((a)+(b))及び事務費・専門家費
50万円以下 50万円超 〜10万円 〜20万円
補助率 3/4 2/3 1/2
対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費【複数社連携IT導入類型のみ】事務費・専門家費
※参考)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2021/hosei/IT.pdf

IT導入補助金の申請の流れ

IT導入補助金の申請は、以下の流れに従って行われますが、電子申告のみで行うためネット上だけで完結できます。ただし、交付決定前に発注や契約を行った場合は、補助金の交付を受けられなくなることに注意してください。

1)IT導入支援事業者の選定

補助金の申請前に、IT導入支援事業者とITツールを選定しておきます。

2)「gBizIDプライム」アカウントの取得

「gBizIDプライム」とは、経済産業省及び中小企業庁が実施する、複数の行政サービスを1つのアカウントにより利用することのできる認証システムで、無料で取得することができます。IT補助金の申請をするためには、事前にこのアカウント(ID、パスワード等)を取得しておく必要があります。

3)事業計画書の作成と交付申請

補助金の申請に必要となる事業計画書の作成は、申請者だけでなく、IT導入支援事業者と共同して行う必要があります。(ただし、交付申請は申請者が提出)

交付申請後、審査に合格した申請者に対して、事務局より「交付決定通知」がされます。これにより申請者は「補助事業者」となり、補助事業を開始することができます。

4)補助事業の開始

補助事業に関するITツールの発注・契約・支払いなどを行います。ただし、事業を実施する際には、必ず契約を最初に行う必要があります。

5)補助金の交付手続き

事務局は、事業実施後に提出された「事業実施報告」にもとづき確定検査を行い、事業が適切に実施されたことが認められた場合には、補助事業者に承認を依頼します。補助事業者がこの承認をすると事務局は補助事業者へ「補助金額確定の通知」を行い、補助金を交付します。

I T導入補助金を利用して受注や事業に生かす方法

クライアントにI T導入補助金を利用させて受注につなげるケース

個人事業主の方の営業先等にIT補助金利用の可能性がある企業がある場合には、この補助金の仕組みや導入するツールのモデルなどを提案することにより、サポート業やそれに付随する業務の獲得に生かすことができます。

しかし、この場合には前述のとおり、IT導入補助金IT導入支援事業者と共同して申請する必要があるため、自らが導入事業者となる必要があります。

なお、補助対象となるITツールには、たとえば「労務・給与計算・人事」などを統合管理するアプリや「在庫管理・資金回収管理・物流・販売支援」などの支援ツールなどがあるため、これらの事務や計画の立案に困っている企業などへの提案は有効といえます。

提案のための具体的な事例を知りたい場合には、下記のサイトなどが役立ちます。

IT導入補助金 活用事例|中小機構

自社がI T導入補助金を利用するケース

I T導入補助金は、他社への提案に使えるだけでなく、自社で申請してツールの導入をする役にも立ちます。しかし、この場合に注意したいのが、個人事業の場合には、上記のような労務や給与計算といったソフトがほぼ利用できないということです。また、在庫管理や販売支援などといったものも、利用の必要がないところが多いでしょう。

そのため、個人事業主が自分の事業に役立つツールで、最も現実性の高いものといえば、

  • グループウェアやテレワーク管理ソフト
  • 会計支援ソフト
  • RPA(定型的な作業を自動化できるツール)

などが該当するでしょう。

とくに今回から導入が予定されている「デジタル化基盤導入類型」のITツールについては、会計ソフトやECソフト、PC・タブレット、レジ・券売機に関するソフトウェア購入費、2年分のクラウド利用費、ハードウェア購入費、導入関連費などが補助対象となり、補助額も50万円までなら3/4となるため、個人事業主にはおすすめといえます。

なお、本補助金においては、Webサイト制作やリース製品については対象外とされているため、Webサイト制作などでの利用はできないことに注意してください。

まとめ

IT導入補助金は「導入するツールの数や内容で類型が分かれる」、「IT導入支援事業者の協力が必要」などといった、他の補助金にない特徴があります。しかし、導入する計画さえ立てれば事業計画書の作成は、原則IT導入支援事業者側で行ってもらえるので、手間がかからないともいえます。また、新制度として会計ソフトやECソフトに特化した「デジタル化基盤導入類型 」も導入されたため、個人事業主にはさらに使いやすくなっています。

この記事を書いた人


WRITER

引地修一

Ichigo(一期)行政書士事務所代表 / 行政書士 / 宅地建物取引士 / 事業再生士補 【著書】 『確実に公的創業融資を引き出す本』、『次の決算に間に合う銀行格付けup術』、『飲食店開業のための公的融資獲得マニュアル』 創業支援・公的融資支援を中心に行政書士兼ライターとして活躍。融資・経営・補助金などをメインとした記事を執筆しています。