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Web制作でコンペ案件と上手につきあう方法

2021.10.21

中村 和正

Webサイトやシステムなどを新規構築やリニューアルする際にはコンペ形式となる場合も多いですよね。コンペの打診を受けた際に実際に参加してるのは誘っていただいたうちの1/4くらいです。

単純に忙しくて受けれないという時もありますが、コンペを受けるかどうかの基準を自分なりに決めていて、結果的にそのくらいの割合になっているという感じです。ここではコンペに参加するかの基準や参加した際に受注確度をあげるためのポイントを紹介していきます。

コンペ案件はできるだけ回避したいのが本音。

コンペに参加するためにはオリエンを受けて企画書を書き、デザイン案などをつくってプレゼンの準備をするので、そこには多くの工数(経費)がかかります。指名発注や紹介に比べて営業工数がかかるのでコンペ形式でないにこしたことはありませんよね。ですが、クライアント側がより良い会社に依頼したいという気持ちも分かります。

しかし、コンペをしたのに案件自体がクライアント社内で未承認だった。スケジュール通りに結果公示されずに結局流れてしまうといったケースもありますので参加する際も慎重に吟味しく必要があります。

参加を判断するためのポイント

まずは大きく以下のポイントをチェックしています。

  • 取り組んでみたい案件かどうか?
  • RFPがきちんと用意されているか?

単純に案件として興味を持てるかどうか。これは言ってしまえばより好みですが依頼元の企業や業種やプロジェクトに興味がもてるかどうか?

失注すれば徒労に終わるかもしれないので、それでも提案書書くのが楽しかったと思えるような案件であれば参加します。また実際に受注した際に実績として魅力的なものであれば、今後の営業資産にもなるのでリスクを負ってチャレンジしてみる価値があるでしょう。

次にRFPがきちんと用意されているか。「Webサイトをリニューアルしたいので提案して欲しい」「よい提案なら採用するので自由に提案して欲しい」「予算は相場が分からないので御社の費用感で構わない」といったほぼ自由演技のものも少なくないのですが、それではルールも勝敗基準も分からない試合に参加するようなものです。RFPでは以下が抑えられていることが最低条件になります。

  • プロジェクトの目的
  • 提案の評価基準
  • 予算

しかし、コンペをすること自体が初めてでやり方がよく分かってないという企業もいますので、その際はまずはRFPの作成支援を提案しています。

このあたりを抑えておかないと、デザインがよかった、コンテンツ案がよかったなどたまたまクライアントに刺さった会社が受注することになります。またこのようなケースはプロジェクトの目的が定まっていないことが多いので実際に受注しても要件が二転三転するようなプロジェクトになる可能性が高いです。

また「提案は1番良かったのですが予算があわない」といった理由で失注してしまう場合もあります。費用対効果でなくお財布事情であれば事前に分かることなので、クライアントが投資可能な予算は必ずおさえておきましょう。

デザイン案はなるべく出さない

コンペではできるだけデザイン案は出さないようにしています。もちろんRFPに提出要件としてあるのに無視するということではなく、デザイン品質はポートフォリオで選定してもらうように事前に提案しています。

理由としては選定の際に各自がデザインの好みに引っ張られ、それによって他の項目が過小評価されたり度外視されてしまって、正しい選定がされなくなる可能性が高いからです。

自分の会社のWebサイトをどんな風にデザインしてくれるのか見てみたい気持ちは分かるのですが、まさにその期待値が裏目にでてしまうのです。また実際の例では現場には一番評価されていたのに、社長がデザインを気に入った他社に鶴の一声で決定してしまったなんてこともありました。

もう1つは提案デザインからその会社の技量を読み解くのは難易度が高い点。情報設計力を測りたければワイヤーフレームの方が適しているし、デザイン力が知りたければ担当デザイナーのポートフォリオの方が分かりやすいです。

なのでデザイン提案は工数がかかる割に互いにメリットが少ないので基本的には避けるようにしています。ただ社内稟議などでどうしてもデザイン案が必要というクライアントの場合はコンペフィーを用意してもらうか、内定をもらったら正式発注の前にデザイン案を出すといった形で進めています。

コンペでは選ばれながら選ぶ

コンペを受けた際には全力を尽くしますが、受注をすれば同じプロジェクトチームで一緒に成功を目指す仲間となります。なので選ばれる立場であると同時に一緒にプロジェクトをやりたい方々かという点でこちらが選ぶことも重要です。

現場の担当者のモチベーションが低い、自社への愚痴が多い、質問などやり取りのレスポンスが遅い、下請けのように扱っていると感じる言動や行動が多いなどの場合はプロジェクト化してもうまくいかない可能性が高いので辞退させてもらっています。

コンペで勝率をあげるポイント

諸々の条件を踏まえて参加したい、ぜひ受注したいというコンペに出会えたら今度はクライアントに選ばれなければなりません。そのためにコンペの勝率をあげるためのポイントをいくつかご紹介します。

1)オリエンテーションで期待値をあげる

提案前に勝負ははじまっています。提案前のオリエンテーションや質疑応答などの時点で相手の期待値をあげるようにしましょう。具体的にはオリエン前にクライアントのビジネスや業界の市況を理解しておく、参考になりそうな実績や解決策などを軽く頭出しできるよう準備しておくといったことで「この会社は良い提案をしてくれそう」と期待値をあげることができます。

2)提案には実際の担当者で望む

提案の内容も重要ですが、プロジェクトにおいてはどんなメンバーと仕事をするかと言うことも重要になります。会社としては評価が高くてもどんな人が担当になるかはクライアントの不安要素にもなりますので、提案には受注した際に担当するメンバーで臨み、個人のプロフィールや経歴なども紹介することでクライアントに安心してもらうようにしましょう。

3)プラスαで期待値を超える

RFPにて指定された提出物や網羅すべき内容に応えるのはもちろんですが、その上でクライアントが気づけていない課題とその解決策やクライアントの課題を1~2歩踏み込んで想定される内容などプラスαの提案をします。できれば実績と絡めて提案できるとベストです。

4)提案書のレイアウトを整える

使用する文字サイズと余白やマージンなど、資料内でルールを統一し美しくレイアウトします。読みやすくレイアウトされた提案書は内容の説得力・信頼感を後押ししますし、逆に読みづらい提案書で「見やすく分かりやすいWebサイトをつくります」と言っても説得力はありませんよね。

具体的なポイントは以下の通りです。

本文サイズは大きめに。

まず本文の文字サイズは14pt前後を目安にします。文章が入り切らない場合に文字サイズを小さくすることは避け、文章を見直して文字数を減らすかページを分けます。そうすることで結果的に内容も分かりやすいものになります。

レイアウトルールを揃える

デザイナーのようにきれいに装飾することは難しくても、これを気をつけるだけで圧倒的に見やすくなります。

見出し(大見出し・中見出し・小見出し)、本文、箇条書き、表など同じ要素は文字サイズや色を揃える。段落の間や要素の間の余白を揃えます。最近のパワーポイントであれば要素をドラッグしたさいにガイドが出るので、それにあわせて配置しましょう。

5)提案書だけを読んでも伝わるように書く

提案の際にはプレゼンテーションをしますが、その場に参加していない人に資料が展開されることもありますので資料がひとり歩きしても読むだけでも分かるように作成します。

また忙しい上層部の方が閲覧することも考慮し、提案内容を1ページ程度に端的にまとめたエグゼクティブサマリーを冒頭にいれましょう。このエグゼクティブサマリーは実際の提案時にも最初に全体像を把握してもらうことで内容を理解されやすくなるというメリットもあります。

コンペを楽しめる環境をつくろう

もちろん指名発注や紹介の方が営業効率はいいですが、一様にコンペを否定しているわけではありません。コンペが好きか嫌いかというとどちらかと言えば好きな方だと思います。

コンペに参加することで成長できたり、新しい業界のことを知れたりというメリットもありますし、コンペを勝ち抜いて受注できれば達成感もあります。

ただし、提案しないと仕事がとれないし、コンペをより好んでいる余裕がないという場合は自社のPRなどに問題がある可能性が高いです。また質を問わずにコンペに出ていると工数も取られた上に、提案の質も下がり勝率も下がるという負のループに入ってしまいます。

まずは紹介や指名で安定した売上が取れる状況をつくることで、厳選したコンペだけに参加することができて集中して質の高い提案をして獲得していくという好循環を目指していきましょう。

この記事を書いた人


WRITER

中村 和正

Kazumasa Nakamura

株式会社 gracenote CEO
WACAウェブ解析士マスター

Web業界17年目。Webマーケティングや経営領域のコンサルティングや運用支援を行うほか、プロジェクトマネージャーやインフォメーションアーキテクツとして数多くのプロジェクトにも参画している。 自身がWebフリーランスから法人成りした経験を活かし、フリーランスの独立・成功を支援しています。